「カスタムパーツ」と呼ばれる部品にこだわる人々がいます。自動車やバイクなど、純正品に替えオリジナルで仕立てるマニアの奥深い世界。真鍮製のドリッパースタンドや、(コーヒー豆をいれる)ホッパー蓋を木製にした電動コーヒーミルなど、コーヒーの愛好家も例外ではありません。
趣味で作ったウッドハンドル
「KONO式」で有名な珈琲サイフオン株式会社が扱うウッドハンドルのコーヒーサーバー。元々KONO式の大ファンだという木材職人さんが趣味で作ったことがはじまりなんだそうです。このウッドハンドルは、いわばマニアが作ったカスタムパーツ。それが純正品として認められ公式ショップで販売されるまでになりました。なんだか面白いストーリーですよね。
実はカフェノマも最初の写真に写る家庭用焙煎機に、木製のカスタムパーツをあてています。
コロンとした丸みのある姿がかわいいKONO式 コーヒーサーバー(2人用)。数種類ある樹種のうち、所有するのは栗(写真左)と桜(写真右)です。※栗の販売は終了
手間ひまかかる天然木
一般的にコーヒーサーバーの多くは、ボディとハンドルが一体になった耐熱ガラスが主流です。電子レンジで温めたり、食洗機でもそのまま洗える利便性から、家庭に限らずプロのバリスタが使う様子もたびたびみかけます。
ひるがえってこのウッドハンドル付きのサーバーに目を向けると、少々異なる事情があります。天然木を使ったハンドルは、使用後洗うたびに濡れて水分を帯びます。使い込むほどに味わいは増しますが、温度や湿度変化による収縮・膨張を日々繰り返し、木の経年変化はどんどんと進みます。私たちも、ときどきミツロウを塗るなどして、手入れを怠りません。
木肌のざらつきをほどよく残す天然木のハンドル。ナマモノと言われるように日々状態が変化しています
手間はかかるのに手放せない。このウッドハンドル付きのサーバーが持つ根強い人気は、実はあることと無縁ではない気がしています。
モノがやわらぐ木製パーツ
インテリア好き、なかでもナチュラルなモノや木の風合いを好むひとにとって電化製品のセレクトには少々手こずります。金属のボディやゴム製のパーツなどはインテリアに馴染まないと、ついつい敬遠されがちです。
木の温かみは、特に電化製品においても人々の心を引きつけます。最近では、そんなニッチなニーズに応えるように、ハンドルが木部でできた電子レンジや、電気ポットをだすメーカーが増えてきました。ただし、天然木ではなく、木目の模様を印刷したプリント製です。
急冷アイスコーヒーを抽出する様子。ドリッパーはハリオV60、ドリッパーを支えるドーナツ状の木製リングは、iwakiのSNOW TOPシリーズのもの
小さな生活道具もインテリアの一部
カフェノマが考える「心地よいバランスを保つインテリア、2対8の法則」というものがあります。味のある古いものが2割、新しいものが8割という割合で考える空間のこと(参考「心地よいバランスを保つインテリア、2対8の法則」)。
実はこのことがテーブルをスタイリングするときにも生かされているということを、私たち自身も気づくようになりました(参考「温かみのあるテーブルコーディネートに、チークのビンテージトレーが便利」)。
そしてこの2対8の法則は、新旧のバランスだけでなく、カスタムとオリジナルの組み合わせにも当てはまる気がしています。今回ご紹介するKONO式コーヒーサーバー。このサーバーひとつとっても、木部のハンドルとガラス製のサーバーが、同じような割合でバランスしていることに気付かされます。
心地良さとはなにかを考えるとき、空間に限らず、家具や生活道具に至るまで、つねに味わいのある古いものと、新しいもののバランスを意識すると良いかもしれません。