洗濯物を見ながらコーヒーを飲みたくない
前回の最後は、手間ひまかけて淹れるコーヒーを飲みたくなる空間って大事だねっていう話でした。その空間について聞かせてください。
わかりやすく例えれば、家の中に干した洗濯物を見ながら、手間ひまかけて淹れたコーヒーを飲みたい気分にはならないということです。
生活の場ではあってもできるだけ生活臭のようなものをうまく消しながら、かつ落ち着く空間というのを、目指している... なのでたぶんお気に入りのカフェのいろんな場所に行って入るカフェの、こういうところが好きだなとか、いいなって思うところの断片をいつも(記憶のなかに)集めてるのかもしれません。
生活臭がコーヒーの味を邪魔しちゃう?
やっぱり コーヒーを飲むときの空間てすごい、自分にとっては大事だと思っていて、やっぱりそれは味だけじゃ成立しない。せっかくコーヒーを淹れて飲むなら、その過程を楽しみたいと思っていて、それが行われる場所、家という場所は なんだろう いつでもそうやってコーヒーを飲みたい時に淹れられる、淹れたいなって思える空間でありたい、そこで淹れて飲んでみたいっていう空間を、どこかで意識してるのかなとおもいます。
まず 洗濯物が干してない。あとどういう
リビングでいえばソファーが思いつくと思うんですけど、ソファーに腰を下ろした時にふぅーって力抜くじゃないですか。で、力抜いたらコーヒー飲みたいじゃないですか。だからソファーに腰を下ろしたときふと自分の目線の先にあるものが、自分の好きなもの、自分が美しいと思うもの、生活臭のないものっていうのは考えます。
いま、仮にソファーに腰を下ろしてコーヒーを飲もうとしているとして、目の前に広がっている景色というか、目に映ってるものは何なの?
自分で買い集めたコーヒーカップが棚に並んでいたり、あるいはまぁ普通の広さのマンションに住んでいるので、キッチンも隣接というか、リビングダイニングみたいに同じ空間にあるわけなんですけど。炊飯器とかそういったものはもちろんあるんですけど。(ソファーに)座ったときには見えないっていうふうな、こう、ふぅーっと現実に引き戻されるような。
自分がお気に入りのカフェのカウンターに座ったとして、あーのんびりするな、いいなと思った時に、ふと目の前を見たら絶対無いであろうものは(見えないようにと)考えてます。
その生活臭とか、現実的な何かとか、そういうものがカフェにはないってこと
自分のお気に入りのカフェにはないですね。やっぱりプチ現実逃避を求めてそういう空間でコーヒーを飲んでると思うので、自分はですけど んー ないですね。
コーヒーを飲みたい時はいったん片付ける
現実逃避っていうときの現実ってなに?
生きていくためにしなきゃいけないこと。
生きていくためにしなきゃいけないことから逃避しようとしてるの?
たとえば当たり前のことだけど。
んー さっき言った洗濯ものを畳んだり干したりとか、散らかったお部屋だったりとか、そういったのは普通に生活してたらどうしてもそうなるじゃないですか。そういったものはやっぱりいったん片付けるんですよね、コーヒーを飲みたい時は
そういう、コーヒー飲むときにいろいろやることがあるんだ。
ゼロじゃないですけど。ただ、なるべくわざわざやって重い腰を上げないといけないような、毎回毎回そうだと自分も疲れちゃうし、何のためにコーヒー飲んでるんだってことになるので。
そういったことが必要ないようにいちおう家の構造っていうか、収納とか空間の切り方とかは考えてつくっています(※)。
設計士でも何でもないんですけど、昔から、家の間取りとか考えるのが好きだったので。こうだったらいいなと思うことがずっと頭の中にいろいろとあったので。そういったことを組み合わせて今の家ができてるのかなぁって。
※ 弓庭が間取りから考えた自宅のLDK。今も当時も珍しい自由設計のプランが選べるマンションとして売り出されていました。
コーヒー飲む前にひとりでやること
その生活臭とか、現実的なものとかそういうものがない、自分の好きなものに囲まれた空間でコーヒーを飲むってのが自分なりの贅沢っていうことなんですよね。ぜいたくにしてはすごくこう質素なぜいたくだなと思うんだけど
そうですね。自分の内なる、それこそ内なる何か喜びっていうか。でも毎日って、ほとんど同じ日々の繰り返しじゃないですかリズム的には。
お正月だとか、クリスマスだとか毎日あるわけじゃないっていう意味では同じ毎日の繰り返しなので。その中でこう自分の中でウフフって思う時間がちょっとあったら毎日楽しいんじゃないかなって思うのがそういうところですね うん だからいいんですよ。(贅沢は)ちっちゃくて あの… 笑
お気に入りのモノってあとなんだろうね。コーヒーを飲んでる時に目に映り込む何か
お気に入りのものっていうとそれはそれで話が止まらないと思うから、大きくなってくからやめときます。
では、さっき出たそのソファーに腰掛けて見える景色が大切って話。そのソファーから見える景色っていうのは自分にとってどれくらい大切な景色なの?
だいぶ 笑
それを考えないことはない。例えば家の設えを任されたときに、もうその空間が決まってたら、ちょっと選択肢がだんだんなくなってくんだけど。
もしがらんとした箱から任されたら、結構そこが重要なポイントかも。腰かけてゆっくりするって言う瞬間に何が目に入るかっていうのはとても大切 うん
この家を設計するときの、レンガとポットとキッチン。レンガと白いポットがあって、そこでコーヒーを淹れる自分の姿を想像して、全体ができたっていうくだり。その時はどこにソファーを置いてどういう景色にするとかっていう発想はあったの
ありましたよ。
窓との関連性とか、外の景色を見るのか、あるいは光を(背中に)感じながら家の中(の好きなもの)に目を向けるのか、ご飯を食べてるダイニングでは(海が見える)外を見るのかとか、そういった、座る場所は場所で目にするものっていうのは考えました。
じゃぁまぁ たった1杯のコーヒーを飲むための
まぁ舞台みたいなものが自分の中ではあって、そこにこうあんまり好きじゃない、目に入れたくないものがあるだけでもう自分としてはそわそわしちゃう
そわそわします。ちょっとあれ隠したいとか。
そうですね
だからコーヒー飲む前に今でもひとりでやってるんですけど、ソファー座る前にこう見渡してるんですよ。ちょっとあの掃除しかけのモノとかが目に入ったら入らないようにしたりとか、ドア閉めに行ったりとか、そういうのはしてますね
そういうことをやる事は別に苦じゃない?
苦じゃない。だって自分のためにやってるから。あの誰かに見せるんじゃなくて自分がそうしたいからしてる
それはこの、たったいっぱいのコーヒーをおいしく飲むためというより、自分がリラックスするために整えてるって話
あぁ好きなものに囲まれてるなぁーみたいな(笑) あぁ、コーヒー飲もうみたいな
ふーーん