「苦味が強めのコーヒーが好き」、「酸味はちょっと苦手」など、好みのコーヒーの味を思い浮かべたとき、そんなふうに感じたことはありませんか?実は、この「苦味」や「酸味」、さらには「甘味」といった風味の多くは、焙煎という工程で生まれています。「コーヒーの焙煎とは?」という疑問に答えながら、自分好みの豆や味わいを見つけるヒントをお届けします。
焙煎とは?コーヒーの味を引き出すプロセス
「生豆(なままめ)」とは、収穫された後に乾燥させた状態のコーヒー豆のこと。生豆のままでは、コーヒーを抽出することはできません。この豆に熱を加えて炒ることで、徐々に色づき、香ばしい香りや甘味、酸味が生まれます。これがコーヒーの焙煎後に現れる風味の秘密です。
焙煎は加熱時間や温度、タイミングを緻密に調整する繊細な作業であり、味わいを左右する重要な工程です。職人である焙煎士(ロースター)は、豆の持つポテンシャルを最大限に引き出すために、細やかな観察と経験を駆使しています。
ここから、焙煎の度合いが、コーヒーの風味にどんな違いをもたらすのかをみていきましょう。
焙煎度合いで変わる味わいの違い
日本での焙煎度を表す段階は次の通りです。浅煎りから順に、ライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアン。イタリアンが最も深煎りとなります。
- 浅煎り(ライトローストやシナモンロースト)は、フレッシュで軽やかな酸味が楽しめます。
- 深煎り(フレンチローストやイタリアンロースト)は、苦味が際立ち、香ばしい風味が特徴です。
ただし、気をつけたいのは、これらの焙煎度はグラデーションであり、明確な時間や数値で区切られているわけではありません。A店のミディアムローストが、B店のシティローストよりも深煎りだった、ということもありますから、注意が必要です。コーヒーは農作物であり、人の手で味わいをつくるものですから、店による個性や、そのときどきの味の出会いも楽しみのひとつです。
この豆、おいしいなと感じたときには、「豆の色」にもぜひ注目してみてください。色味を覚えておくと、スムーズに好みの焙煎度を伝えやすくなります。
浅煎りと深煎りのどちらが好み?味わいの選び方
浅煎りは、豆本来の酸味や甘味を活かした味わいが特徴です。一方、深煎りは、香ばしさとコクが際立ちます。「浅煎り=酸っぱい」「深煎り=苦い」という一般的な印象がありますが、実際には焙煎度だけでなく、生豆の種類や品質も味わいに大きく影響します。
好みの焙煎度を見つけるコツとして、コーヒー豆を購入する際に、「焙煎された豆の色」に注目してみてください。気に入った豆の色を覚えておくと、お店でスムーズに希望を伝えられるようになります。
浅煎りは酸っぱくて、深煎りは苦いって、本当?
加熱時間が長く、色が濃い状態になれば、苦味も強くなる。これはなんとなく想像がつくと思います。
同様に、深煎りに近づくほどに酸味は薄れ、苦味が強くなるのが一般的に知られるコーヒーの風味です。自分の好みや、飲みたい味の方向性を知るひとつの目安にしてみてください。(もちろん、生豆の種類によって、もともと持つ酸味の量は違いますから、同じ焙煎度でも酸味の感じ方は異なります)
深煎りは、こうばしい香りが魅力的ですが、豆そのものの味わいの個性、たとえば果実のような甘味や香りも薄れていくため、豆本来の違いが分かりづらくなると言われています。
浅煎りの場合、酸味は残りますが、同時に甘味も残るため、単に酸っぱいコーヒーとはなりません。水にレモンを絞ると酸っぱいですが、そこにハチミツを足せばおいしく飲むことができます。ハチミツを入れる前と後とでは、レモンの量、つまり酸味は同じですよね。
コーヒーの味わいは、苦味や酸味、甘味などの複数の要素のバランスで構成されます。焙煎による風味の違いを知ることで、コーヒー選びがさらに楽しくなります。
焙煎をもっと楽しむために
コーヒーの焙煎は、ただ豆を炒るだけではありません。酸味、苦味、甘味が複雑に絡み合うプロセスで、味わいのバリエーションが無限に広がります。焙煎士たちのこだわりや技術を知ることで、コーヒーを選ぶ楽しさが増します。
焙煎は、コーヒーの味わいを決める最も重要なプロセスです。浅煎りの爽やかな酸味から、深煎りの力強い苦味まで、焙煎度合いの違いを楽しむことで、自分だけのお気に入りの一杯を見つけてみませんか?