コーヒーの味を決めるのは、原料となる生豆7割、焙煎2割、抽出1割と言われています。わたしたちが「おいしいコーヒー」を飲みたいと思ったとき、はじめにこだわりたくなるのが抽出方法、たとえばハンドドリップの器具やテクニックではないでしょうか。でも、そのもう一歩手前にあるコーヒー豆の種類や焙煎についても理解を深められたら。それはきっと、思い描く理想のおいしさへの近道になるはずです。
産地の個性が、そのままコーヒー豆の個性に
そもそも、「コーヒー豆」とは、コーヒーノキという植物に成る赤い果実、その中にある種子を指します。その種を焙煎し、おなじみの茶色いコーヒー豆ができあがるのです。そう、コーヒー豆は農作物。ですから、コーヒーノキが育つ土壌や気候といった、その土地が持つ個性に味わいが大きく左右されます。
温暖な気候に合わせてつくられたみかんや、寒暖差が激しい土地のりんごなど、日本だけでもその土地ごとにおいしさや個性が違うのはご存じのとおり。コーヒーも同様です。
コーヒーノキは、どこでも育つというわけではありません。最適な気候や風土が存在し、そのほとんどは赤道付近に集中しています。おおきくは、アフリカやアジア・オセアニア、中米や南米です。この一帯は、「コーヒーベルト」と呼ばれています。
代表的な産地では、アフリカならエチオピア、アジアではインドネシア、中南米ではブラジル、といったところです。だんだん、コーヒーを選ぶときに目にしたことのある名前に近づいてきましたね。
ここで、代表的な産地による味わいの個性を、いくつかご紹介します。
飲みたい味にさらに近づける、コーヒー豆の種類と焙煎度の選び方
さて、産地の個性が少しずつ分かってきたところで、次に「焙煎(ロースト)」です。
どんなシーンで、どんな味わいを求めていますか?
どんなおやつと一緒に、コーヒーを楽しみたいですか?
それに合わせて、コーヒー豆の種類や焙煎度をセレクトできたら、自宅での楽しみ方も、ぐんと広がります。
ここでは、コーヒーの好みやシーンに合わせた豆や焙煎度の選び方の一例をご紹介します。
ブラックで飲むなら
- コクや苦味が好きなら、インドネシアの深煎り
- さわやかな酸味やフルーティーな味わいが好きなら、エチオピアの浅煎り
アイスコーヒーで飲むなら
- 抽出後、氷で一気に冷やす「急冷式」なら、薄まってもしっかりと味わいが残る深煎り
- 氷を入れず、冷蔵庫でゆっくり冷やして飲むなら、感じる浅煎りも。暑い季節にも喉を滑るように飲める味わいに
ラテやカフェオレで飲むなら
ミルクに負けないどっしりとしたコクのある、ブラジルの深煎り
スイーツに合わせて飲むなら
- 濃厚なクリームや焼き菓子などの洋菓子は、甘さに負けないコクのある深煎り
- どら焼きやまんじゅうのようなあんこには、洋菓子同様コクのある深煎りを。上生菓子のような繊細な和菓子には、お茶を合わせるイメージで浅煎りを。
すでに好みのコーヒーに出合っているという人も、毎回、同じ味わいにとどまるのはもったいないかもしれません。コーヒー豆を買うとき、自分の思い描くコーヒーの味や、飲みたいシーン、もしくは「この豆がおいしかったので、似た味わいでおすすめはありますか?」などと、お店の人に伝えると、ぴったりの種類や焙煎度をおすすめしてもらえるはずです。
また、おいしいな、と感じたときの「豆の色」を覚えておくと、スムーズに好みの焙煎度を伝えられます。
「いつものおいしさ」から、さらにもう一歩。さらに豊かなコーヒーの時間を過ごしてみてください。
参考文献:石脇智広著『コーヒー「こつ」の科学』(柴田書店、2019年)