コーヒーのある生活
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カフェノマってなんで始めたんだろうね。
結婚してまもない頃、何が好き?って聞かれて。趣味のコーヒーの道具やコーヒーカップがすでに家にたくさんあったので。
コーヒー?って聞かれたから、コーヒーそのものじゃなくてコーヒーのある生活かなぁって答えたのがはじまりです。
コーヒーのある生活とは?
コーヒーそのものは専門的な、味を追求するプロフェッショナルな感じがして、そこにフォーカスあてるんじゃなくてコーヒーの周辺。それは器具だったり、コーヒーを飲む時間や空間だったり、そういうことのほうが私は大切にしてるのかなって。
白い壁にアートがあるだけでなごむ
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コーヒーを飲む空間でいうとアートをけっこう飾るでしょ?僕はもともと何もない家が好きだったんだけど。この家は色々こう飾ってある。トイレからリビングから。なんでアートを飾るんだろうねっていうのを教えてください。
ふとした瞬間に、例えばリビングにちょっと大きめの好きな絵が飾ってあるとして、こう何もない白い壁にそういうものがあると、目が誘われてなごむというか、その一瞬のためかなって。
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ソファに座って、ふぅーって辺りを見渡したとき、あ あの好きなやつだみたいな。そういうほんのちょっとのなごみスポットのような感じかな。
モナ・ヨハンソンさんの歪んだ街
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どんな絵が好きなの?好きなアーティストとか、作家とかクリエイターとか
今好きなのは、スウェーデンのアーティストモナ・ヨハンソンさん。fine little dayさんが扱ってる、スウェーデンのヨーテボリという街並みを描いた作品。その街並みをモノクロで描いてる画があるんだけど。だれって聞かれたら、彼女が今一番好きな人。私たちのアトリエに飾ってあります。
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どんなところが好きなの?
なんかね、あの 街が歪んでるんですよね。
街が歪んでるから好き。なんですかそれ っていうか... 何がどういうふうにこう、心に訴えるわけ?
街の中にひとが描かれてるんだけど、その中の1人になりたいみたいな。笑
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「歪んでいるのが好き」の答えになってない気がするんだけど...
たぶん正確に描いたら間違ってるっていう…
建物はほんらい歪んでないと。
実際にこれだけ歪んでたら、立っていても傾いてるんだろうなって。でも傾く気持ちがわかる。笑
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どんな気持ちなのそれって。
たぶんまっすぐ描いたら、こうなったんだと思う。
気持ちの中ではまっすぐ描いてるんだけど結果、歪んだってこと?
一生懸命ここを描きたいなと思って、その1本1本の線に集中するがあまり結果歪んじゃったんだなって。
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でも、その歪んだときにふつう描き直すんじゃないの?まっすぐ描きたかったなら。
出来上がったものが歪む。でもその辺に愛情がたっぷり注がれているような感じがします。
綺麗すぎないから、味わいがある
弓庭が描いたフンテルトバッサーハウスの挿絵
建築物として有名なフンデルトバッサーハウスが好きっていうでしょう?歪んだ線があって。あれも同じ理由なんだ。
たぶんまっすぐ過ぎたら味わいが...綺麗なんでしょうけど、それ以外のもの、良さは何かなくなっていくような気がして。歪がみ、角度、線の揺れ方、筆圧とか、そういうのが個性なのかなって。
味わいって何?よく出てくるけど、味があるとか、味わいとか。
たぶんきれいなものを、ちょっと崩したときにできる隙(すき)のようなものかな、予定調和じゃないような。
きれい過ぎるとよろしくないと。
面白くない。個性はないかなって。同じものがハンコを押したように何個でもできるんだろうなって。
アート、建物、あと器もそうだけどちょっと歪んでるのが好きだよね。
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なんだろうね。なんで歪んでるのがかわいいんだろう。素朴な感じがするのか、緊張感が和らぐのか。例は極端だけど、フォークとナイフで食べるような、かしこまったお店には、歪んだお皿はでてこない気がする。カジュアルなお店では、それこそお皿も目で味わうように、歪んだものが出てきそうだけど、すごくきちんとしたお店ではたぶん出てこないよね。そういう場所を否定するんじゃないけど、予定調和でキレイ、でも味わいっていうものはないのかなぁって。
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歪んだものをみると、緊張感から解き放たれるように感じるのかも。「リラックスしていいよ」って、言われてるような気がする。
そこはでも一気通貫してるよね、あなたは。
せめぎ合い、うまれるワンカット
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ずっと写真撮ってきたけど、ふたりは真逆を視ていると僕は思ってて。弓庭はそうやって常にどこかを崩す、でも僕は常に無駄を省いていこうとするわけ。だから、その歪みだとか不均一だとか、揃ってないとか、そういうのを構図の中に入れたくないっていう方向にむかう。
そうだよね。
そこでけっこう、いつもせめぎ合う。で、どこか途中で諦めるんだろうし、僕も途中で諦めているんだけど。どこかからこれは私じゃなくて、カフェノマだって割り切りになってるのかな。例えば、器ひとつ選ぶときもよく僕がいうじゃない。「それじゃない」と。僕はすっきりしたシンプルなものを、弓庭は、いびつな真っ直ぐじゃないものをいつも求めて
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でもぜんぶが歪んでたらお腹いっぱいになるっていうのありますね。全部ではなく、何か和ませるものが一品だけ入ってるというのが理想です。
いびつね。歪んでる。真っ直ぐじゃない。
モナ・ヨハンソンさんのイラストをコンピューターで修正してまっすぐにしたら、たぶん欲しくない。もう全部良さがなくなってしまいそう。
緊張感ってなんだろう
さっきいったその緊張感ってなんなんだろうね。話が変わるけど、例えば会議をしてて、沈黙があるとするでしょ。そういう時、弓庭は沈黙をきらって、そこを正そうとするじゃない。でも 緊張感ってテンションでしょ?テンションがあったほうがまあ良い場合もあるじゃんないかと。
良い場合もあるけど、ざっくばらんに意見、こうしたらいいんじゃないかって。思ってる心の声を、表に出しやすい雰囲気ってあると思っていて。
この人にこれ言ったら、怒られるんじゃないかとか、笑われるんじゃないかとか、そういうふうに思った時点で意見をしまい込む人がいて。
もし良いことを思っていても出てこないので。
もちろん緊張感の中で、これ言うべきか言わないべきかって判断する雰囲気も必要だと思うけれども。お仕事として、テーブルに向かっているという前提で、ここで言おうか言わまいかと思ってることが出せると、いいなと思っている。もうその場に飲み込まれて、今日はちょっと言えないなってしまっちゃう人もいるので。
だから、本当のことが出させなくなっちゃうのが1番イヤというか・・・ここでは言っていいんですよっていう。ピーンと張ってたら、ああそうですねしか言えなくなるっていうのもあると思う。
空間の緊張感をほぐす存在
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今の話と、モノや空間に対していうときの緊張感は同じもの?
まあ似てるかもしれないですね。
モノや空間もそういう存在であってほしいと。
そうですね。全部だとダラーんとするけど。
例えば真っ白な壁に子供が落書きしたら、お母さんがダメよって、怒るような壁じゃなくって。後でこれも味わいだねって、何かデザインの1つになってない?みたいな、そういう感じ。
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ひとつのキズも何も許さない空間だと息が詰まっちゃうかなと思っていて。
例えば、人が来て、うちに足を踏み入れたとして、なんか落ち着かないなと思われたら負けっていうか。うっかり人の家に居るのを忘れたぐらいのテンションになってもらったら、やったぁって思う。いつのまにか忘れてて長居したいなって思ってもらえたらいいなって。そういうのって緊張感がないってことでしょ?たぶん、そういうのを狙って、狙ってるっていうか。うん。
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