マリメッコ オイヴァシリーズのエスプレッソカップ&プレート。カップはプレートの中心から少しずらして置くようデザインされています。個性がありながらどこか控えめな印象のこのカップ。ドット柄のほうは10年以上前から自宅にありますが、とくにデザインやプロダクトについて深くは考えず、お菓子が載るお気に入りのカップとして日常的に使ってきました。
マリメッコ オイヴァ エスプレッソカップ&プレート。ひとくちデザートの豆腐チョコレートを添えて
個性があるのに控えめ。絶妙なバランスを持つこのカップをどんなひとがデザインしたんだろう。そんなことがあらためて気になり、この文章をまとめることにしました。
デザイナー サミ・ルオッツァライネン
このシリーズをデザインしたのは、フィンランド出身のデザイナー サミ・ルオッツァライネンさん。マリメッコの少し大きな本「マリメッコ パターンとデザイナーたち」にも紹介されています。この本のなかの一番好きなページが、カップやポットのスケッチがたくさん描かれたページ。実は最近まで、これがオイヴァシリーズのスケッチだとは気づいていませんでした。
※ドット柄のデザインは、テキスタイルデザイナー マイヤ・ロウエカリさん
デザイナーの生の言葉に触れられる『マリメッコ パターンとデザイナーたち』。豊富に掲載された写真やイラストも魅力
サミ・ルオッツァライネンさんが描く、オイヴァシリーズの最初のスケッチ
この本には、マリメッコで活躍するデザイナーが数多く紹介されています。文章はデザイナー本人が一人称で語るスタイル。オイヴァをデザインしたサミ・ルオッツァライネンさんの言葉をあらためて丁寧に拾っていくと、私が日常的に感じることと共通する思いが多く語られていました。いくつかご紹介します。
“必需品で実用的であると同時に、自分の存在を強調しないようなモノ”
“よいデザインにはどこか時間を感じさせません”
“家というのは、古いものと新しいものが融合されて成り立っています。インテリアを全く新しくしてしまう人の気持ちがわかりません”
これらの言葉に感じるのは、“周囲に馴染むことの大切さ”です。個性の際立つモノより、互いに馴染むモノを選んだり、お気に入りの空間は、時間をかけ少しずつ実現していくことなど。私も同じことを考えていたと、思わず”おおー”と嬉しくなる言葉の数々でした。
小料理屋のお猪口選びがヒントに。バスケットのままテーブルに運び、好きなカップを選んでもらいます
ソーサーではなく「プレート」と呼ばれる理由
私たちの場合、自宅でエスプレッソを飲む習慣はほとんどありません。飲む時はたいていお土産を頂いたり、特別な甘いお菓子が手元にあるとき。お菓子に負けない濃いコーヒーにあわせるときにオイヴァが登場します。プレートあってのオイヴァというわけです。
そもそも“カップ&プレート”という名前。ソーサーではなくプレートだというデザイナーの思いがここから読み取れます。ソーサーは上品さの象徴やテーブルを保護するために古くから使われてきましたが、お菓子を添える受け皿としての役割も増してきたように思います。結果、古典的なソーサーの意味を見直したオイヴァのような「プレート」が誕生したというわけです。
お茶請けのクッキーがピッタリ収まるプレート
エスプレッソとチョコレートは理想のペアリング
一口サイズのチーズケーキ。取皿のようにも使え、まさにプレートそのもの
お菓子を載せるためにデザインされたプレート
このカップを初めてみたときのことを今でも覚えています。お菓子を置いてくれと言わんばかりの余白。コーヒーだけでなくお菓子も一緒に楽しんでね、という作り手の思いに気づき、ひと目みて迷いなく購入を決めたのでした。