II. モノ選びの基本

中身を選ぶ

あなたの周りにあるモノは、あなたの物語を語っていますか?

流行っているから、便利そうだから、と何となく選んだモノたち。気づけば、本当に大切にしたいモノが、雑多なモノの中に埋もれてしまっていませんか?

私たちが空間に置くモノは、単なる道具ではありません。それは、私たちの価値観や経験、そして物語を映し出す“中身”そのものです。「モノ選び」とは、自分自身の物語を編集していく作業に他なりません。

思い入れのないモノは手放し、心から愛せるモノだけを迎え入れる。そうすることで、空間はあなただけの特別な意味を持つ場所へと変わっていきます。

ここでは、愛着の湧く“中身”を選び、育んでいくための三つの視点をご紹介します。

愛着の湧く中身を選ぶ、三つの視点

step01

時間を感じさせる

新しさと古さを共存させる

すべてが真新しいモノで揃えられた空間は、清潔ですがどこか緊張感を伴います。私たちは、空間に心地よい「抜け感」を与えるために、「新しいもの8割、古いもの2割」というバランスを大切にしています。新しいモノがもたらす清潔感と機能性の中に、誰かの手を経てきた古い家具が持つ温かみや物語が加わることで、空間に歴史の厚みと居心地のよさが生まれるのです。

step02

素材を活かす

五感で触れる豊かさを知る

私たちは、視覚だけでなく、五感すべてで空間を味わいたいと考えています。すべすべとした木のテーブルの手触り、ひんやりとしたガラスの質感、ざらりとした陶器の温かみ。異なる素材を組み合わせることで、空間は感覚的に豊かな場所になります。特に、自然素材が持つ不均一さや温もりは、プラスチック製品にはない安心感を私たちに与えてくれます。

step03

モノの配置を考える

モノ同士の関係性をデザインする

一つひとつのモノは素敵でも、ただ無秩序に置かれているだけでは、その魅力は半減してしまいます。モノを配置するときは、まず空間の「主役」を決めます。そして、その主役を引き立てるように、他のモノとの「間」を意識しながら配置していく。そうすることで、モノとモノとの間に対話が生まれ、空間全体がひとつのまとまりのある風景になるのです。

まずはここから。一つのモノと向き合ってみる

あなたの家にある一番お気に入りのコーヒーカップを、ただ一つ、テーブルの真ん中に置いてみてください。そして、なぜ自分がそれを好きなのかを少しだけ考えてみる。それが、あなただけの物語を紡ぐモノ選びの始まりです。