III. 雰囲気づくりの基本

気配をまとう

言葉では説明できない「心地よさ」の正体

お気に入りのカフェや、訪れた友人の家で感じる、言葉ではうまく説明できないけれど「なぜか心地いい」と感じる空気感。その正体は何なのでしょうか。

それは、家具やモノといった目に見える要素だけでなく、その空間全体から醸し出される「雰囲気」や「気配」です。完璧に整えられていることだけが、心地よさの答えではありません。むしろ、少しだけ力が抜けているような、その人らしさが滲み出るような空間に、私たちは惹きつけられます。

雰囲気づくりとは、空間にあなたらしい“気配”をまとわせる、少し高度なデザイン行為です。

ここでは、人を惹きつける“気配”をまとうための、三つの秘訣をご紹介します。

人を惹きつける気配をまとう、三つの秘訣

step01

「抜け感」を出す

完璧すぎないことの魅力

モデルルームのように完璧に整えられた空間は美しいですが、どこか息苦しさを感じさせます。人が本当にリラックスできるのは、少しの「ズレ」や「遊び」が許容されている空間です。手仕事の跡が残る器や、住む人の個性が感じられる飾り付け。そうした不完全さが、空間に親しみやすさと温かみ、つまり「抜け感」を生み出すのです。

step02

静けさをつくる

目と耳から入る情報を整理する

心地よい雰囲気は、静けさの中から生まれます。ここで言う「静けさ」とは、単に音がない状態のことだけではありません。目から入る視覚的な情報をコントロールすることも含まれます。使う色を3色程度に絞ったり、雑多なパッケージのものをシンプルな容器に移し替えたりする。そうして視覚的なノイズを減らすことで、心は落ち着きを取り戻し、思考がクリアになります。

step03

メリハリをつける

空間に心地よいリズムを生む

静かでありながら、退屈ではない。そんな生命感のある空間をつくるには「メリハリ」が必要です。直線の多い空間に、あえて曲線的な形のテーブルを一つ置く。全体を落ち着いた色調でまとめながら、クッション一つだけを鮮やかな色にする。そうした意図的な対比が、空間に心地よいリズムと面白みを与えてくれます。

まずはここから。「ズレ」を一つ、つくってみる

きれいに並べた本棚の本を一冊だけ、少し斜めに置いてみる。完璧な状態を意図的に少しだけ崩してみる。その小さな「ズレ」が、あなたの空間に親しみやすい「抜け感」をもたらす第一歩です。