IV. 暮らし方の基本

営みを愛でる

空間はゴールではなく、暮らしのパートナー

美しい空間をつくることは、ゴールではありません。それは、豊かな暮らしを育むためのスタート地点です。どんなに整えられた空間も、そこで過ごす私たちの「営み」が伴って、はじめて生き生きとした場所になります。

カフェノマが最終的に目指すのは、空間が暮らしの美しい背景になるだけでなく、住む人の良きパートナーとして機能することです。空間が私たちの行動に働きかけ、私たちの行動が空間をさらに豊かにしていく。そんな相互作用の中に、理想の暮らしがあります。

「暮らし方」とは、その空間であなたがどのように振る舞い、何を感じるかという、日々の営みそのものをデザインする考え方です。

ここでは、日々の“営み”を愛でるための、三つの習慣をご紹介します。

日々の“営み”を愛でるための、三つの習慣

step01

行動をデザインする

望ましい振る舞いを自然に誘う

「座りたくなる」椅子があれば、自然と読書の時間が生まれます。「淹れたくなる」美しいコーヒー器具があれば、慌ただしい朝に一杯を丁寧に淹れる儀式が生まれます。優れたデザインは、私たちが「こうありたい」と願う行動を、無理なく自然に誘い出してくれます。日々の所作そのものが美しくなるような工夫を、空間の中に散りばめてみましょう。

step02

五感で楽しむ

感覚を研ぎ澄まし、記憶に残す

私たちの暮らしの記憶は、風景だけでなく、香りや音、手触りと共にあります。部屋に広がるコーヒーの香り、素足で触れる無垢材の床の質感、カップがソーサーに触れる澄んだ音。そうした五感で感じる体験を意識することで、何気ない日常は、より深く、記憶に残る豊かなものになります。

step03

暮らしを編集する

主体的に日々を更新していく

住まいは、一度完成したら終わりの静的な作品ではありません。それは、住む人とともに変化し続ける、生き物のようなものです。「一つ増えたら、一つ手放す」というルールを決めたり、季節ごとに小さな飾り付けを変えたりする。そうして暮らしを主体的に「編集」し続けることで、私たちは空間への愛着を深め、暮らしの主導権を自分の手に取り戻すことができるのです。

まずはここから。一つの所作を儀式にする

毎朝のコーヒーを淹れる時間を、少しだけ丁寧に。豆を挽く音に耳を澄ませ、お湯を注ぐ香りに集中する。たった一つの所作を「儀式」のように捉えるだけで、いつもの一日が、少しだけ特別なものに変わっていくはずです。