百年続く製陶の町を訪ねる

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2024/04/13 9:58:15

2017年の10月から12月にかけ延べ7日に渡り、岐阜県多治見市の滝呂町へと取材にでかけました。私たちがはじめてつくるコーヒーカップ。その製造の様子を写真や映像に記録するためです。これから何回かに分けて、当時の取材の様子をお届けします。

 

理想のコーヒーカップ

私たちには、理想とするコーヒーカップがあります。軽くて飲み口が薄く、普段遣いできる丈夫な磁器であること、ひとつひとつが手仕事のような味わいを残しながら、量産できるプロダクトであるということ。ネットで調べた岐阜の製陶所に伺い、このようなカップをつくりたいと伝えたところ、こころよく引き受けてくださることになりました。

_1.85.1水分と不純物を取り除く「素焼き」のための窯

カップができるまで

カップが出来上がるまでの工程は多岐にわたります。私たちも何度も説明を聞き、現場に伺って作業を拝見して少しづつ全体のプロセスを理解していきました。
このことを理解することが、私たちにはとても重要なことでした。それは、私たちが理想とするカップの条件にあります。100gを切る軽さを実現しながら丈夫であること、量産品でありながら手仕事のような味わいを残すなど、いっけん矛盾した、相反することを同時に実現しようとしていたからです。

_1.27.1「素焼き」後のカフェノマ オリジナルカップ。いくつもの工程がこの後にもつづきます

町全体がひとつの工場

カップの製造を依頼したのは、ひとつの製陶所です。ですが実際は、各工程の職人の作業場は点々とし、製陶所を中心としながらも町全体がひとつの工場のように分業化されていました。カップの型を作る職人、カップを成形し釉薬を塗り焼成する工場、焼成したカップのふちに絵付けをする職人、さらに、他にもたくさんある工程を、それぞれ別の職人が担い、そして、その作業場は町のあちこちに点在しているのです。

_1.42.1素焼きを経て、カップ底にロゴの判子を押したばかりのカフェノマ オリジナルカップ

_MG_9126-2-2釉薬(ゆうやく)の色味を確認するためのサンプルカップ。さらに、バックスタンプの確認用にロゴもたくさん押されています。

滝呂町は坂道の多いところ。その坂道の路地を軽トラックで走り抜け、それぞれの作業場を巡りました。

_1.152.1ボディの型をつくる作業。ろくろの上のカップに全神経を集中します

_MG_9160-2-2ハンドルの型だけをつくる作業場。溝に土や水を混ぜた泥漿(でいしょう)を流し込みます

この町の分業のしくみは海外へ輸出する貿易が盛んだった頃に、そのフローが出来たとお聞きしました。時代とともに変遷する製陶産業、それでも、百年前からつづく陶磁器の生産地、滝呂町を取材していると、変わらない職人の息遣いが伝わってきます。

_MG_9033-2-2ハンドルをひとつひとつ丁寧にボディに接着します

7年以上前の取材ですが、当時のことをいまでも鮮明に思い出します。製作を快く引き受けてくださった製陶所代表の方のインタビューや、7日分の映像などを交え、製陶の現場の様子を今後もお伝えしたいと思います。