BtoB ナーチャリングをBtoC に応用する意味
長い時間をかけて検討する商品(住宅、自動車、高級家具など)を販売する場合は、お客さまとの接点を重ねながら、少しずつ信頼関係を築くことが大切です。BtoB マーケティングでは、お客さま(見込み顧客)と継続的にやりとりする「ナーチャリング」が基本です。たとえば、メールで定期的に情報を送る「メールナーチャリング」などがあります。
一方、BtoC (消費者向け)では、お客さまがSNSを利用することが多く、メールをこまめに読んでいただけるとは限りません。そこで、BtoB 的な「段階的に情報を出していく仕組み」を、メールの代わりにInstagramのストーリーズで応用することを考えてみます。
ストーリーズは24時間で消える投稿形式のため、気軽に見ることができます。質問やクイズ機能を使えば、お客さまと直接やりとりする機会も増えます。この特性を活かすことで、BtoC のお客さまとも、段階的に距離を縮めながら商品への理解を深めていただくことが期待できます。
BtoB ナーチャリングとBtoC への応用ポイント
BtoB ナーチャリングのポイント
BtoB でメールナーチャリングを行う場合、以下のような特徴があります。
1.情報を段階的に出す |はじめは概要から、徐々に詳しい情報へと進めていきます。
2.定期的に接触する |見込み顧客が忘れないように、一定の間隔で情報を届けます。
3.相手に合わせた内容(パーソナライズ) |顧客の業種や興味分野を踏まえ、最適な情報を選んで提供します。
BtoC で活かすコツ
これをBtoC 向けにアレンジするときは、次のポイントが大切です。
ストーリーズを「メールの代わり」と考える |1回で一気に伝えるのではなく、複数回に分けて少しずつ情報を発信します。
質問スタンプやクイズを活用してやりとりを生み出す |お客さまが気軽に疑問点を送れるようにし、後で回答するなど、双方向のコミュニケーションを大事にします。
段階ごとにわかりやすい情報を用意する |「初めて知ったばかり」「比較検討している」「もうすぐ購入を考えている」など、それぞれのステージごとに最適な投稿を計画します。
ストーリーズでの段階的コミュニケーション(ドラップ)の組み立て方
下の表は、商品検討のステージに合わせて情報を出すイメージです。
段階:初期(認知) |ブランドの世界観やコンセプトを簡単に紹介するストーリーズ。ビジュアル重視で雰囲気を伝える。 「何だろう?」「面白そう!」と興味を持ってもらう
段階:中盤(比較検討) |製品の特徴や他社との違いを実例で紹介。質問機能で疑問点を集めて、次の日に回答を投稿する。 「どう違うの?」「どんな良さがあるの?」をクリアにし、理解を深めてもらう
段階:終盤(購入直前) |限定オファーやFAQのまとめ、オンライン相談会の案内など。必要な情報を最後にわかりやすく提供する。 お客さまが「よし、買おう」と決心する後押し
段階:購入後フォロー |製品の使い方やアフターサポート案内、実際のユーザー投稿(UGC)の紹介などをストーリーズで発信。 買った後も満足度を高め、さらにファンになってもらう
短期集中型と中長期型
短期集中型 1~2週間の短期間で集中的にストーリーズを投稿し、お客さまの関心を高めます。
中長期型 1~3ヶ月ほどの長期計画でゆっくりと段階的な投稿を行い、お客さまとじっくりつながります。
ストーリーズをナーチャリングパイプラインにするためのポイント
ハイライトを活用して“まとめコーナー”を作る
ストーリーズは24時間で消えてしまいますが、「ハイライト」機能を使えば保存できます。
ハイライトの分け方(例)
「はじめての方へ」 ブランドのコンセプトや導入動画
「詳しい製品情報」 スペック・比較一覧・実際の使用例
「購入ガイド」 価格、問い合わせ、FAQ
交流できる機能をフル活用する
質問スタンプ
「疑問があれば教えてください!」と投稿すると、お客さまが気軽に質問できます。後日、その質問に答えるストーリーズを投稿すれば、さらに理解を深めてもらえます。
クイズ機能
製品に関する簡単なクイズを出して、楽しみながらメリットや特徴をお伝えできます。
リンク誘導でさらに深い情報へ
スワイプアップやリンクスタンプで、自社サイトやオンライン相談予約ページへ誘導します。
BtoB でよくある「ホワイトペーパー」ダウンロードと同じ発想で、BtoC では「カタログPDF」「動画ツアー予約」「限定クーポン」などを提供する方法があります。
運用と効果測定のコツ
重要な指標(KPI)
ストーリーズの閲覧完了率 |最後まで見てもらえたかどうかで、内容への関心度を測れます。
リンクのクリック率 |特定のページへの誘導がどのくらい成功しているかを把握できます。
Q&Aやクイズの参加数 |やりとりの回数が多いほど、お客さまの興味や関心が高いと言えます。
PDCAサイクルを回す
Plan(計画) |どんな情報を何回に分けてストーリーズで投稿するか、スケジュールを決めます。
Do(実行) |計画どおりに投稿し、質問スタンプなども活用します。
Check(評価) |インサイト(閲覧完了率、リアクション数など)を見て、反応を確認します。
Act(改善) |良かった部分をさらに伸ばし、物足りない部分は補足情報を追加したり、別の表現に変えてみます。
ケーススタディ
住宅ブランドの場合
初期 |ストーリーズで「こんな家を目指しています」という動画を連投し、ブランドの世界観を伝えます。
比較検討中 |
「家づくりで気になることは?」と質問スタンプで聞き、集まった疑問を翌日まとめて回答します。
間取りや材質、リフォームの手順などを何回かに分けてストーリーズで紹介。
購入直前 |「ローンや支払いに関する不安はありませんか?」というFAQと、オンライン相談へのリンクを投稿します。
高級家電メーカーの場合
初期 |ブランドのこだわりや製造工程を短い動画で紹介して、ものづくりの裏側を見せます。
比較検討中 |
クイズ機能で「当社家電が自慢するポイントは?」と出題し、正解者に限定クーポンを案内。
他社比較のグラフをストーリーズで見せ、詳細はスワイプアップでサイトに誘導。
購入直前 |設置方法やアフターサポート案内をストーリーズで周知して、不安を解消します。
BtoB ナーチャリングをBtoC に活かすメリット
長い検討期間が必要なBtoC 商材では、「まだよく知らない」「情報不足で不安」という状態になりやすいのが課題です。BtoB マーケティングが得意とする「段階的に情報を提供し、お客さまとのコミュニケーションを深めていく」スタイルをInstagramストーリーズに取り入れると、次のようなメリットがあります。
お客さまが自然な流れで商品を理解できる
メールよりも気軽な感覚でやりとりできる
興味の度合いに応じてリンク先や相談ページに誘導しやすい
購入後のフォローやコミュニティづくりもスムーズになる
こうした方法を取り入れれば、BtoC の分野でもお客さまと長く深い関係を築きながら、安心して購入していただきやすくなります。ぜひストーリーズという手軽なツールを使って、継続的にコミュニケーションを重ねてみてください。