どうしてフォロワーの段階分けが必要なのか
Instagramでフォロワーを増やすことを目指している企業は多いです。しかし「フォロワーが増えたのに、売上につながらない…」という声をよく聞きます。特に住宅や高級家具、自動車などのように、購入までに時間がかかる商品(長期検討型商材)では、フォロワーに丁寧な情報提供やコミュニケーションが必要です。
一方、BtoBマーケティングの世界では「顧客関係管理(CRM)」が広く使われています。BtoB企業は、顧客ごとの興味や検討段階に合わせて情報提供し、段階的に信頼を積み重ねていきます。このやり方をBtoC向けのInstagramにも取り入れると、フォロワーが「どんなことを知りたくて、どのくらい商品に興味があるのか」を把握しやすくなり、売上にもつなげやすくなります。
この記事では、BtoBのCRMの考え方を参考にしながら、Instagram上のフォロワーを段階ごとに分けてアプローチする「フォロワーセグメンテーション」の方法をご紹介します。
BtoBのCRM視点をBtoCフォロワー分析に役立てる
BtoB CRMとは
BtoBでは、企業がお客さま(企業)へ提案するときに、長い時間をかけて関係づくりを行います。複数の担当者や決裁者に情報を伝えたり、何度も相談を受けたりする中で、段階的に信頼を深めていきます。これを上手に管理するのが「CRM(顧客関係管理)」です。
BtoCへの応用ポイント
- フォロワーを一括りに見るのではなく、購入検討の初期、そろそろ商品を比較している、購入直前などに分けて考えます。
- 段階ごとに必要な情報や興味が異なるため、それに合わせた投稿やストーリーズを作ります。
- そうすることで必要な情報がすぐ手に入るブランドとして、フォロワーの心をつかみやすくなります。
フォロワーを段階で分けるときの基準(セグメンテーション軸)
どのようにしてフォロワーを段階分けすればいいのでしょうか。たとえば、以下のような軸を使います。
セグメンテーション軸 |
説明 |
購買検討ステージ |
「ブランドを知ったばかり」「情報収集中」「比較検討中」など |
エンゲージメント度合い |
いいね数、コメント数、保存数、DMでの質問などのアクション |
プロフィール訪問頻度 |
投稿だけでなくプロフィールをよくチェックするかどうか |
興味のある情報の種類 |
製品の機能紹介、価格情報、口コミ・事例、ブランドの想いなど |
BtoBで使われるMQL(Marketing Qualified Lead)やSQL(Sales Qualified Lead)のように、「興味がある程度」や「購入準備がどのくらいできているか」を示す目安をBtoC用に設定すると、細かい対策をしやすくなります。
具体的なフォロワーセグメンテーションの例
ここでは、フォロワーを大きく4つの段階に分けて、どんなアプローチが合うか紹介します。
ライト層(Awareness層)
特徴|ブランドをなんとなくフォローしている
特徴|投稿にときどき「いいね」をするが、深いコメントは少ない
アプローチ|ブランドコンセプトや世界観をわかりやすい画像や動画で伝える。
アプローチ|ストーリーズで投票機能などを使い、フォロワーの関心をゆるやかに引き出す
ミドル層(Consideration層)
特徴|いいねや保存が増えてきて、時々コメントもする
特徴|商品の違いや価格などを比較し始めている
アプローチ|商品の機能やスペックを図表やインフォグラフィックスでわかりやすく紹介
アプローチ|UGC(ユーザーが投稿した写真や感想)を共有して、実際の使用例を示す
アプローチ|ストーリーズで「よくある質問」をまとめ、疑問を解消
ハイエンゲージメント層(Decision層)
特徴|コメントやDMで積極的に質問する
特徴|価格やオプション情報を詳しく知りたがる
アプローチ|DMで相談にのり、オンラインでの説明会や個別カウンセリングに誘導
アプローチ|限定クーポンやキャンペーンで購入を後押し
アプローチ|もう少し詳しい資料(カタログやホワイトペーパー)を見せる
ロイヤルファン・アンバサダー層
特徴|すでに購入したか、ブランドを強く応援してくれている
特徴|SNS上で他のユーザーに商品を勧めるなど、積極的に発信してくれる
アプローチ|特別イベントへの招待やファン限定の情報公開など、コミュニティを盛り上げる
アプローチ|新商品やサービスの感想をいち早く共有してもらう
アプローチ|アンバサダー限定のキャンペーンを行い、口コミを広げてもらう
フォロワーを分けるためのツールやテクニック
Instagramインサイトを活用する
Instagramのビジネスアカウントには「インサイト」という分析機能があります。フォロワーの年齢層や住んでいる地域、投稿やストーリーズの反応状況などを確認できます。また、DMやコメントなど質的なやり取りを通して、フォロワーがどのようなことに興味をもっているか知ることも大切です。
CRMやマーケティングオートメーション(MA)ツールを組み合わせる
BtoB企業がよく使うHubSpotやMarketoなどのツールは、BtoCでも活用できます。Instagramから自社サイトに流れたユーザーの行動データやフォームの送信状況と組み合わせて、「どの段階にいるフォロワーか」をより正確に判断できます。さらに、興味のある層だけを対象に広告を出す「カスタムオーディエンス」などの機能も便利です。
ストーリーズの投票やクイズ機能で意見を集める
ストーリーズには投票やクイズなど、フォロワーに気軽に参加してもらえる機能があります。これらを使うと、「どんな商品情報が気になるか」「購入を検討するうえで不安なことは何か」などをリアルタイムで集めることができます。DMでの質問対応も合わせて行うと、より深いインサイトを得られます。
各セグメントの戦略を統合してPDCAを回す
ジャーニーを設計する
- ライト層 → ミドル層 → ハイエンゲージメント層 → ロイヤルファン
- それぞれの段階で「どんな情報・体験が必要か」を整理し、投稿やストーリーズ、DM、外部サイトなどを組み合わせましょう。
成果を測定する
- 各層のフォロワーが増えているか、購買率に変化があるかなどを追いかけます。
- 投稿ごとのエンゲージメント、サイトへの誘導数、購入件数を分けて分析すると効果がわかりやすいです。
PDCAサイクルを回す
Plan(計画)|各層向けの投稿テーマやキャンペーンを決める
Do(実行)|実際に運用・投稿・キャンペーン実施
Check(評価)|インサイトやDMの反応などをチェック
Act(改善)|上手くいった点は継続し、改善点は修正して再度試す
BtoB的な「長期目線」でフォロワーを育てる
BtoBのCRM発想をBtoCのInstagram運用に取り入れると、フォロワーを「数」だけで見るのではなく、段階に合わせたケアができます。特に購入まで時間がかかる高額商品や長期検討型商材では、こうした長期的な視点が重要です。
将来的には、AIを使ったフォロワー分析や、オンライン・オフラインをまたいだデータ連携で、さらに精度を高めることが期待できます。まずは「フォロワーを4つの層に分けて、それぞれに合った接点を作る」ことから始めてみてください。段階を意識した発信を積み重ねることで、フォロワーとの絆が深まり、結果的に売上にもつながりやすくなるはずです。