BtoCマーケティングにABM発想を取り入れる理由
高額商品や長い検討期間が必要なBtoC商品を扱うとき、多くの企業は「幅広い人に向けた一括広告」や「おおまかなターゲット設定」でアプローチしがちです。しかし、検討時間の長い商品を購入するお客さまは、多くの情報を比較しながら悩むことが多いため、一律のアピールでは響かない場合が少なくありません。
そこで役立つのが、BtoBの世界で一般的な「アカウントベースドマーケティング(ABM)」の手法です。BtoBでは特定企業ごとにピンポイントで施策を考えますが、これをBtoC向けに応用すると、「一人ひとりの興味や購買ステージに合わせたコミュニケーション」ができるようになります。
ABMとは? そしてBtoCでのアカウントって何?
ABMの基本的な考え方
- BtoBでよく使われる手法です。
- 顧客となりうる「特定企業(アカウント)」に対して、それぞれの状況に合わせた施策をおこない、深く関わりを築いていきます。
- 「全員に同じ広告を打つ」よりも、「見込みの高い相手に集中して丁寧にアプローチ」する点が大きな特徴です。
BtoCにおけるアカウントのイメージ
BtoCでは企業がお客さま一人ひとりを「アカウント」として見ることになります。たとえば、下記のような視点で「個々のお客さま」や「共通点をもつ顧客グループ」を捉えます。
検討ステージごとのアカウント
- 商品のことを知り始めたばかりの「初期検討層」
- ある程度比較を進めている「中期検討層」
- 購入直前であとは背中を押してほしい「最終検討層」など
興味や行動パターンごとのアカウント
- ハイエンド家電が好きな世帯
- ラグジュアリーホテルを好む旅行好きの夫婦
- マンションと戸建てを迷っている新婚夫婦など
ABMをBtoCの顧客セグメントに使う流れ
ここでは、ABMをBtoCで活用するためのおおまかなステップを紹介します。
ステップ1:データを集め、顧客インサイトを把握
Instagramのインサイト(閲覧数やクリック数など)やウェブサイトのアクセス解析、過去の購入データ、問い合わせ履歴などを確認します。こうした情報から、
- どんな層がよく見ているか
- どの投稿で反応が高いか
- 購入や問い合わせに結びつくアクションは何か
といった傾向をつかみます。
ステップ2:顧客を分ける軸を設定
BtoBなら企業規模や業界などで分けますが、BtoCでは「興味関心」「検討期間」「購買意欲」「ブランドへの接触頻度」などを軸にしましょう。たとえば、下のようなシンプルな表で分けるのもひとつの方法です。
セグメント |
特徴 |
行動指標例 |
初期検討層 |
商品について情報収集を始めたばかり |
プロフィール閲覧多め、保存は少ない |
中期検討層 |
比較してブランドを絞り込みたい |
製品レビュー投稿を頻繁に閲覧・保存 |
最終検討層 |
具体的な価格や納期などを知りたい |
DMによる個別質問や相談会参加 |
ステップ3:ペルソナをさらに細かく「ミニアカウント」にする
一般的にBtoCでは「ペルソナ」という仮想顧客を設定しますが、ABM発想を取り入れるなら、もっと絞り込んだ「ミニアカウント」ごとに考えるほうが有効です。
- 例:「ハイエンド家電を半年以内に買い換える意思があり、公式Instagramをフォローして定期的に新製品の動画をチェックしている30代夫婦」
こうすると、よりピンポイントなコンテンツを用意できます。
ステップ4:セグメント別に最適なコミュニケーションを考える
それぞれのセグメントごとに、必要な情報やタイミングを変えます。
初期検討層|商品の基礎知識やイメージ(写真や簡単な動画)
中期検討層|レビュー比較、ユーザー体験談、専門家のコメント
最終検討層|価格や契約までの流れ、限定キャンペーン情報 など
具体的なSNS活用方法
Instagramのストーリーズハイライト
「入門ガイド」ハイライト|商品の選び方や基礎知識をまとめておく
「比較・事例」ハイライト|実際の導入事例や競合比較を集約
「キャンペーン」ハイライト|お得な情報やオンライン相談の案内
DMやリールを使った情報提供
DM(ダイレクトメッセージ)|決まった行動(製品カタログのダウンロード、特定のリールへの反応など)をした人に、自動でお礼メッセージや相談案内を送る
リール|セグメント別に適した動画を用意(住宅リフォーム向け、家電レビュー向けなど)
成果を測り、さらに改善する方法
エンゲージメント指標を細かく見る
単に「いいね」数だけを見るのではなく、
など、どのセグメントで反応が高いかをチェックすると、どんなコンテンツや施策が有効かがわかります。
PDCAサイクルで改善を続ける
改善ステップ |
改善ステップ |
定義を見直す |
セグメントが多すぎる場合はまとめる、少なすぎる場合はさらに細分化 |
コンテンツを調整 |
動画の長さや写真の見せ方をセグメント別に変えてみる |
配信タイミングを調整 |
顧客がよく閲覧する時間帯に合わせる |
このように、少しずつ配信方法や内容を変えて、効果を測定→改善することで、セグメントごとの精度がどんどん上がっていきます。
成功イメージと注意点
成功イメージ
ABM的発想で顧客を細分化し、それぞれに合った情報を提供すると、お客さまは「自分のことをちゃんとわかってくれている」と感じやすくなります。結果的に、
- 購入率アップ
- ブランドへの信頼度向上
- 口コミやSNS拡散による新規顧客の増加
などが期待できます。
導入時に気をつけたいこと
データ管理や分析ツールが必要|MAツール(マーケティングオートメーションツール)やCRMなど、ある程度の仕組みがあると便利です。
社内リソースの確保|セグメントごとにコンテンツを作るため、チーム連携や外部人材の活用を考えましょう。
小規模からトライアル|まずは重要度の高い2~3つのセグメントで試し、効果をみながら段階的に広げるとスムーズです。
まとめと次のステップ
長期検討が前提のBtoC商材にこそ、BtoBで培われたABMの考え方が使えます。InstagramなどのSNSを使いながら、
- 顧客の行動やニーズを詳しく捉える
- 検討ステージや興味、行動で細かくセグメント分けする
- それぞれに合った情報を的確なタイミングで提供
という流れを回していくと、お客さまとより深い信頼関係を築くことができ、長期的な売上やブランド価値向上につながります。
次は、「購買ステージごとにどんなコンテンツを用意するか」をさらに詳しく知りたい場合におすすめの記事へ進んでみてください。具体的な発信アイデアや、どんな内容をどの段階で見せると効果的なのかがわかるはずです。
以上が、ABM発想を使ってBtoCの顧客を的確にセグメントし、Instagram上でより効果的なアプローチを行うための方法でした。長期検討型の商品ほど、お客さまとじっくり向き合う機会が増えるので、ぜひ今回のヒントを実践に活かしてみてください。