北東向きの窓辺には、柔らかい光が満ちています。この光を上手に写真に取り入れることで、魅力的な雰囲気を演出することができます。具体的には、早朝の自然光を利用して、被写体のアイスクリームやコーヒーカップに光を当てることで、独特のムードを表現できます。
北東向きの窓辺があって、外から陽の光(自然光と呼ばれます)が差し込むコーナーがあったら、早朝、そこには柔らかい光が満ち満ちているはずです。この光こそが、その場を支配する雰囲気の正体です。写真にぜひ取り入れてみましょう。
今回の題材はこちらのアフォガートの写真。この写真の雰囲気は、撮影日時と撮影場所がキーになっています。
まずは撮影日時。当時の記録をみると、2021年1月3日 7時14分となっています。この日の横浜の日の出は6時50分。日の出から約20分後に撮られました。マジックアワー(日の出前の数十分)が終わり、冬の日差しが差し込むほんの少し前、柔らかい光がカップ内のアイスクリームに届いている様子がわかります。雰囲気をつくる1つ目が、この柔らかい日差しです。
冬の関東はよく晴れます。空気は乾き、すがすがしい朝日が窓から差し込んできます。木のテーブルの先にみえる窓は北東に面し、太陽はその奥のほうから昇ってきます。窓ガラスで屈折した柔らかい太陽光が注ぐ窓辺。この窓辺という撮影場所が2つ目のポイントです。
北東向きの窓辺は雰囲気のある場所で、絶好の撮影舞台だ、というお話をしてきました。ここからは具体的なスタイリングと撮影のアイデアをご紹介します。スタイリングアイテム一覧もページの最後にリストを掲載しています。
今回の主役は、コーヒーカップと中のアイスクリーム。加えて、注ぎ口のついた木製のミルク入れです。ここには熱々のエスプレッソがはいっています。アイスの入ったカップが際立つように周辺の脇役を逆算してセレクトしていくのですが、具体的に撮影当時の思考を辿りつつ、アイテム選びのコツをご紹介します。
アフォガートが主役といいつつ、買ったばかりのビンテージトレイも負けず劣らず格好良く見せたい、僕にはそんな本音がありました。そこで、すべてのアイテムをビンテージ感のあるモノでまとめていくことにしました。経年変化したシャビーな物でまとめると、個々に浮いた印象を与えず、トレイ全体に一体感がうまれるためです。
木製のトレイ、白磁の皿、皿のうえの木製のミルクジャグと、入れ違い(テレコ)に質感のちがうアイテムが重なり合ってることにお気づきでしょうか。実はここにも綿密な計算があります。トレイ全体に一体感のあるまとまりを作りつつも、個々のアイテムが識別できたほうが良いですよね。そこで、木製の皿を使わず、あえて白磁の皿をチョイスし、色合いのコントラストを強調するようにしています。
ここからは撮影のアイデアをご紹介していきます。
色は写真の雰囲気を決めます。「朝日がそそぐ北東向きの窓辺」という雰囲気を壊さないために、できるだけ空間全体が馴染む色調にします。そのためには余計な色を画の中に入れないことが大切です。以下に紹介するカラーパレットは、実際の写真から抽出されたパターンの参考例です。
トレイ周辺や作業台のようなテーブルに限らず、壁に貼ったレトロ調の六角形のタイルや、見切れるように映るエスプレッソマシーンにかかった木製のメジャースプーンなど、実は雰囲気作りに一役買ってくれています。
構図はオーソドックスな三分割法に沿っています。画面を三分割し、左と下の線が重なり合った場所に被写体がくるようにしてピントをあわせ、後方はボケ足をつけています。
いかがでしたでしょうか。北東向きの窓辺というテーマで、そこで撮る写真やアイテムセレクトのアイデアをご紹介してみました。小物などの商品撮影に限らず、戸建て住宅やマンションなどの空間の撮影方法としても参考になったら幸いです。