家のなかのモノが増えだすと、なんとなく落ち着かない気分が続きます。もともと、置き場所をイメージできない物は、できるだけ買わないようにしているのですが、それでも気づけば増えていた、ということがまったく無いわけではないんです。
キッチンを中心にコーヒー関連のものがたくさんあるカフェノマの自宅。なかでも数が多いのはコーヒーカップです。新陳代謝のごとく、ときどきカップの入れ替え戦を行うのですが、何度整理をしても手元に残したいカップのひとつが、アラビアのアネモネシリーズ。私のカップコレクションの殿堂入りアイテムとなっています。
このカップの最も印象的なところは、その色合いです。深い藍色で描かれたアネモネの花びらと、グレーのカップとの組み合わせに思わず見惚れてしまいます。手描きならではの筆運びや筆圧の違い、ひとつひとつ異なる線の揺らぎや色の濃淡が、得も言えぬ温かみを感じさせてくれるんです。
アネモネのもうひとつの魅力は、カップ裏側のバックスタンプ。アネモネに限らず、アラビアビンテージの裏側は、世界的な窯元の歴史をいまに伝えるアイコンです。
このマガジンの名前を「エブリデイ コーヒー リトリート」と名付けた時、最初に思い浮かべたカップはアネモネでした。リトリート(retreat)は、一時的な休息や避難を意味する言葉。私たちにとって、コーヒーは日常から離れて心身を癒やす、お供のような存在なんです。
コーヒーと共に過ごすリトリートの時間。そんなときのお供には、アラビアのアネモネが理想なのかもしれません。