今回ご紹介するのは、ウォーマー付きのポットです。お湯を沸かすためのものではなく、淹れたコーヒーを温めておくポット。電気を使わず、ろうそくの炎で保温するレトロでアナログなポットのお話です。見た目の可愛らしさに目が行きがちですが、もちろん、ただの飾りではなく実際に使える日用品。むしろ、このポットだからこそ楽しめる特別なコーヒータイムの過ごし方をご紹介します。
そもそも、コーヒーをポットで飲む習慣がない人も多いかもしれません。スペシャルティコーヒーなら、むしろ温度とともに変わる味の変化を楽しみたい人も多いと思います。私(弓庭)の場合はちょっと違って… コーヒーなら温かいものは温かく、冷たいものは冷たいまま長く楽しみたいタイプ。コーヒーを飲んでる間は、自分にとっては弛緩できる時間、コーヒーの味以上にコーヒーを飲む「癒しの時間」を楽しみたいという思いがあります。
コーヒーを飲むときの癒される感覚。その感覚とポットがなぜ結びつくのでしょうか。その理由は、ホテルのラウンジ、あるいは、ポットでコーヒーをだす喫茶店での、個人的な体験にあります。
そういう場所では、たいてい2〜3杯分のコーヒーがポットに入ってでてきます。コーヒー数杯分ですから、飲み切るのに30分以上かかります。このとき、私が無言のうちに感じるのは、“ゆっくりとお過ごしください”というメッセージ。「お代わり」できるうれしさより、長居が許されることに、密かな喜びを見出します。
ポットを買って自宅でも同じような時間を過ごしてみたい、そういう思いから旅先でポットを探すようになりました。
今回ご紹介する、このウォーマー付きポットを見つけたのは、オランダのユトレヒトという街。ユトレヒトは、運河に沿った石畳の通りに、小さなカフェやユニークなショップが数多く並ぶ穏やかな雰囲気の街です。
独りのときは、好きな飲み物を温かいまま長く楽しんだり、友人とならポットそれぞれに紅茶やカフェオレなどを入れて、思い思いに自由なタイミングで好きなものをカップに注いだりします。ちらちらと揺らめくろうそくの炎を楽しみながら、キャンプファイヤーのような雰囲気でくつろぐのも特別な時間の過ごし方ですよね。
ポットについては、いままでも何度か記事にしてきました。どれもデザインや機能にくわえ、コーヒーと過ごす時間についても多く触れています。コーヒーを楽しむ時間を象徴する存在、それがポットという気が、いつもしています。