今はなきノルウェー、エーゲルスン(Egersund)のビンテージカップ。海岸沿いの町の名が、そのまま社名になった古窯です。アラビア(Arabia)など数社に経営権が移りながら、1970年代の終わり頃には窯を閉じました。
エーゲルスンは、ノルウェーの家庭でよく見かけるブランドのひとつ。デザイナーやシリーズ名など不明なものが多く、このカップも詳しい情報は見つけられませんでした。
このカップの最も目を引く特徴は、美しい花柄。深い真っ青と白味がかった青の2色で描かれた花柄は、エーゲルスンの匠の手によって一つ一つ丁寧に描き出されたもの。個々の花のかたちや色の微妙な違いが、カップ全体に独特な味わいを与えています。
このカップを眺めていると、子供の頃に過ごしたキッチンが思い浮かんできます。あの頃(昭和)の日本の家庭にはどこにでもあった、炊飯器や湯沸かしポットなどの電化製品。そこに描かれていた懐かしい花柄模様を彷彿とさせるんです。
このカップに象徴されるように北欧諸国の日用品は、その時代の日本のキッチンの風景に少なからず影響を与えているように思います。長い歴史をもつエーゲルスンなどのような古窯から、IKEAのような庶民的な感覚をもつ現在の人気ブランドまで、電化製品に限らず、私たちの生活空間には欠かせない、かけがえのない存在といえそうです。