通常のBtoCマーケティングでは、「認知→興味→比較→購入」というシンプルな流れが想定されています。ですが、住宅や高級家具などのように、買うまでに数週間から数カ月かかる商材の場合、このモデルではお客様の検討期間が十分に考慮されていません。
一方、BtoBの世界では、購入までに長い時間がかかるのが当たり前です。そこでは、お客様を段階的に教育したり、必要な情報をこまめに提供したりしながら、「信頼関係」をしっかり築いていきます。こうしたBtoBでのやり方は、高額かつじっくり検討されるBtoC商材でも役立つのではないか、というのが今回の記事のポイントです。
BtoBの購買モデルには、以下のような特徴があります。
複数の担当者が関わる|導入を検討する人、決裁者、実際に使う部署など、複数人が決め手になります。
導入まで時間がかかる|製品やサービスの詳細を確認したり、提案を比較検討したりして、契約までに数カ月以上かかることもしばしばです。
段階的にお客様を育てる考え方(リードナーチャリング)|まだ興味が浅い段階のお客様へ知識を提供し、興味が深まったら詳細情報を渡し…と、少しずつ購入準備を整えていきます。
お客様をステージ別に管理する|「マーケティングが判断した見込み客(MQL)」と「営業もOKを出した見込み客(SQL)」など、段階ごとに整理して対応します。
こうしたBtoBの仕組みは、お客様と長く付き合うことを前提にしており、「しっかり理解してもらいながら購入へ進んでもらう」という流れが強みです。
高価格帯や特別感のあるBtoC商材を買う人は、以下のような行動パターンがあります。
たっぷり時間をかけた情報収集|レビューサイトやSNS、公式サイト、友人の口コミなど、さまざまな情報源をチェックします。
感性と合理性の両方を求める|ブランドの世界観やデザイン(感性)に加え、耐久性やコストパフォーマンス(合理性)も大事にします。
ブランドやお店とのやりとりを重視|すぐには買わなくても、インスタグラム(Instagram)をフォローしたりDMで問い合わせたりして、自分に合うかどうかを確かめます。
「BtoBの手法を取り入れる」と聞くと、少し冷たい印象を受けるかもしれませんが、実際は違います。大切なのは、長期間にわたるお客様との“つながり”や“信頼”を築くことです。BtoBで学んだ手順や方法を、BtoCのファンづくりにうまく取り入れれば、顧客との距離を縮めることができます。
長期検討型BtoCで、BtoBの考え方を活かすには、主に以下の3つがポイントになります。
教育型コンテンツを用意する|お客様が自分のニーズを発見し、商品を理解できるよう、基礎知識や比較資料などをわかりやすく公開します。
専門的な視点で信頼を高める|例えば、専門家や職人のインタビュー、製品づくりのこだわりを紹介する記事・動画を発信し、「このブランドなら安心」と思ってもらいます。
購買ステップごとに情報を配置する(コンテンツマッピング)|お客様が「興味が出た段階」「具体的な比較を始めた段階」など、各段階に応じて必要な情報を用意し、順番に届けられるようにします。
まずは「お客様の潜在的な悩みや課題」に気づいてもらうような情報を発信し、学びの場をつくります。
FAQハイライト|住宅購入や家具選びなどでよくある質問をまとめ、ストーリーズのハイライトに常設しておきます。
問題提起型投稿|「実は知らないと損する○○の選び方」など、興味を引き出す内容を投稿し、自然と関心を持ってもらいます。
活用事例や数字を使った比較など、お客様が「これは自分に合いそう」と思える材料を揃え、信頼感を高めます。
ケーススタディ投稿|実際に商品を購入した人のストーリーや写真を紹介し、「使う前と使った後の違い」をわかりやすく見せます。
インフォグラフィックス|製品の仕様や機能をイラストや図で見せ、他社との違いがひと目でわかるようにします。
特定のお客様に合わせた情報や提案を行い、購入前の不安を取り除きます。
DMでの個別相談|フォロワーに限定メッセージを送って不安点を聞き、ていねいに回答します。
限定ストーリー|興味を持っている人向けにオンライン相談会や特典の告知を出し、少し後押しをします。
購入して終わりではなく、その後の満足度を上げてファンになってもらうことを重視します。
UGC活用|お客様自身が投稿した写真や感想をリポストしてコミュニティを盛り上げます。
メンテナンスガイド投稿|家具や家電の場合は「お手入れ方法」などを定期的に発信し、長く使えるサポートを行います。
BtoBモデルを下敷きにした購買ファネルの再設計は、インスタグラム(Instagram)でこのように実行できます。
プロフィールを“情報ハブ”に|企業アカウントのプロフィール欄やハイライトを充実させ、興味がある人がまず情報を入手できるようにします。
多彩なコンテンツ形式を使い分ける
BtoBで使われる「MQL(マーケ担当が見込み客と判断)」「SQL(営業担当も納得の見込み客)」という指標をBtoCに合わせる場合、以下のような行動を目安にできます。
BtoBのステージ | BtoC向けの例 |
MQL | 何度もストーリーズやハイライトを見ている、商品説明動画を最後まで視聴したフォロワー |
SQL | DMで見積もりや在庫、オンライン相談会の申し込みをしてきたフォロワー |
段階ごとの行動を追跡する
「どの段階で離脱している人が多いか」を知るために、インスタグラム(Instagram)インサイトと外部の分析ツールを連携させながら、計画(Plan)→実行(Do)→チェック(Check)→改善(Act)の流れを回していくと、より精度が高まります。
長期間かけて検討されるBtoC商材では、シンプルな「認知→興味→比較→購入」モデルだけでは、お客様一人ひとりの長い検討プロセスを十分にサポートできません。そこで、BtoBのように「段階的な教育」や「継続した信頼づくり」を重視するやり方を取り入れると、検討期間が長い分だけブランドへの理解や愛着を育てるチャンスが増えます。
今後は、AIを活用したおすすめ機能や、より詳しい顧客データの分析が進んでいくでしょう。その結果、お客様一人ひとりに合わせた情報提供がさらにしやすくなるはずです。BtoBの知見を活かし、インスタグラム(Instagram)をメインにした長期的なファンづくりを強化していくことで、ブランドとお客様の双方にとって満足度の高い購入体験を実現できるでしょう。
こうしたアプローチは、今後のマーケティング戦略でますます注目されるはずです。ぜひあなたのブランドや商材にも取り入れてみてください。